どうしても作りたかったキッチンウエアたち vol.3
o.e.c. マイティー・スパチュラ
調理器具にも新素材はいろいろと使われます。 ステンレス、チタン、グラスファイバー、フッ素樹脂加工など、、、それらのおかけで随分と調理が楽になったり時間を短縮することができたり、便利な世の中になってきました。今日はシリコ―ンスパチュラ、シリコンのへらのお話です。
今から30年ほど前でしょうか、シリコーン製のスパチュラが発売されました。以来シリコーン・スパチュラというと製菓用の道具で、生地を混ぜたり、集めたり、はらったりするのに欠かせない道具になりました。これだけのことに使うなら、従来のゴム製でも十分用は足ります。が、シリコーン製のスパチュラで私が注目したのはその耐熱性でした。
なんと耐熱温度230℃と書いてあるではないですか。 天ぷらを揚げる温度だって200℃前後。以前のゴムベラは熱いものにはNG、使うと溶けてベタついてしまいます。木べらのように煮込みや炒め物を混ぜたりもできる上に、ゴムベラのしなやかさも備えている。
そうしたら野菜炒め作ってお皿に盛るときには綺麗に払えるではありませんか!
シリコーン・スパチュラ、すごい!これは製菓用だけじゃもったいない。
シリコーン・スパチュラが出回りだしたとほぼ同じ時期にIHクッキングヒーターも全国のキッチンに広まり始めました。IHでは、フライパンの中を混ぜ合わせたい時、天板から離して振ると通電が途切れてしまいます。つまりIHではフライパンは振れません。じゃ、どうやってチャーハンを作るのよ!
答えはシリコーン・スパチュラにあったのです。 2本のヘラを使って、屋台の焼きそばのように左右からすくって混ぜ合わせる。これなら重いフライパンを振り回す必要もありません。またシリコーン・スパチュラは先端が薄く、木べらと違い厚みがないので、ご飯を挟んでつぶすことがありません。その上シリコーン素材だから米粒もくっつきにくいし、色もカラフルで楽しいと良いことずくめです。これらの発見以来私の台所ではいろいろな調理シーンにシリコーン・スパチュラが登場することになります。
でも使っているうちに製菓用に作られたシリコーン・スパチュラの問題点が見えてきました。それは幅、厚み、三辺の硬さ、柄の太さなどです。これらが改良出来たら、素晴らしい道具になるのに。
「私の理想のシリコーン・スパチュラを作らせて」というお願いを聞いてくれたのが貝印株式会社様です。
<一体型> 一体型の方が断然衛生的です。柄までシリコーン製ならシリコーンの特性で滑りにくく手に優しくフィットします。余分な凹凸をなくしたのも扱いやすさの一つです。
<シリコン・スパチュラの横幅> チャーハンを2本のヘラで混ぜる際、横幅が狭いとたくさんのご飯を挟めません。1本で混ぜるのによし、そして2本づかいにも良い幅を求めたらやや幅広になりました。実はフライ返し代りとしても使えます。もちろん私の道具の中にはフライ返しもありますのでそちらのフライ返しのお話はまた別の機会に。
<3辺の硬さ>ここは写真右下の写真を見てください。 シリコーン・スパチュラの3辺の使い方を考えました。え、そんなこと考えたことない?ですよねぇ。でもしっかりと考えましたよ。
Aの部分のカーブは混ぜたりする時、ボウルや器にフィットさせる事で上手に混ぜ合わせることが可能になります。ある程度の柔軟性がないときれいにフィットせずうまく混ぜ合わせることができません。
Bの部分はIHチャーハンでお話ししたように2本ですくって混ぜる時に役立部分です。Aほど柔らかくてはヘナヘナして両側からものを持ち上げにくくなります。
Cの面。まっすぐにすることで鍋やフードプロセッサーの容器など、まっすぐな面にフィットしてはらいやすい。ここは少し硬めの方が使いやすいです。
という事で各面の役割は分析できたものの、実際にそれらの硬さにするには苦労がありました。シリコンの硬さが何種類かあるわけでなく、中に入れる芯と厚みでその硬さが決まるのです。
あ、シリコーンとシリコン、2つの言葉が出てきたことに気づいた方、そうです。シリコンはケイ素からできる素材を表し、出来上がった製品にはシリコーンという名称が付きます。 ごめんなさい。話がそれました。
私からの希望を伝えるとさすがです。開発部の人たちはそれらを具現化できるように図面を起こしてくれました。あとはサンプルを待つのみ。 出来上がりサンプル、すごく良いではないですか。まさに思い描く硬さとしなやかさ。柄の長さはそう長くないのですが、o.e.c.のフライパンで使った時には滑っても中に落ちない長さになっています。 こんないろいろなシチュエーションを考えて作られたシリコーン・スパチュラ。名前はオールマイティに使えるという事でマイティー・スパチュラと決まりました。
しばらくして発売になったミニスパチュラはマイテー・スパチュラのミニチュア版ではなく、こちらにも役割が。まあ、混ぜたりはらったりは大きいものとおなじです。
一番の特色はホテルで出てくるミニチュアのジャム瓶もきれいに払えることです。瓶の底の角にはDを使って瓶の肩と呼ばれる部分にたまった食材もEの部分を使えばすっきりきれいに払えます。写真右中段(pic.3)
これらを実現するため大きなスパチュラより全体を少しだけ柔らかくしてもらいました。
これは余談になりますが、取っ手の所に空いた穴。ひもを通したり、どこかにかけるためのものではありません。この穴はシリコーンの中に入っている金属製の芯を固定する為のものなのです。この芯を入れないと先ほど説明した3辺の硬さは作ることができません。
色は赤と、黒の2色。製菓用スパチュラはベージュや白が多いのですが、加熱調理で長い間使うと茶色に変色してきます。カレーやトマトソースに使っても色は付きやすいもの。黒や赤ならそれらの色の変化も吸収してくれます。
シリコーンベラはほとんどが製菓道具売り場に並ぶものですが、是非料理にも活用してみてください。これ1本で炒めから、払いまで使えるので洗い物も減るというわけです。
シリコーン・スパチュラを調理に使い始めたのは「脇雅世」さんですと東京大学先端科学技術研究員の方に言われた時には驚きましたが、便利な道具の使い方に決まりはありません。
■ o.e.c. マイティー・スパチュラ
【商品について】
料理から、お菓子作りまで料理からお菓子作りまで様々な作業ができるスパチュラです。耐熱素材を使用しているので、加熱中の鍋やフライパンでもご使用いただけます。先端部分の三辺はそれぞれの弾力が違うので、用途に合った使い方ができます。
【商品の仕様】
材質|本体/シリコーンゴム(耐熱温度200度)、芯/ステンレススチール
サイズ詳細|本体サイズ:238×56×10mm、重量:85g
生産国|中国
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